ルージュはキスのあとで
「ごめんね、真美さん」
「……いえ、進くんが謝ることはない、ですよ?」
「そういってもらえると助かるけど……本当、ごめん」
「……」
「京が考えなしにキスだなんて……兄として非礼を謝らせて?」
「進くん」
「本当にごめん。真美さん」
深々と、私に頭を下げる進くん。
慌てた私は、進くんに頭を上げるように近づいた。
「進くんが謝ることじゃないと思います。だから、そんなふうに謝らないで」
「真美さん……」
「ね? 私は大丈夫だし、長谷部さんのこともよくわかったから……大丈夫」
負けず嫌いの性格がここで頭角を見せた。
そして、意地っ張りの性格も……。
傷ついて疼く私のこころを見ないフリをして、私は進くんに微笑んだ。
たぶんうまく笑えていないと思う。
だけど、進くんなら見過ごしてくれると信じてる。
なにか言いたげな進くんだったけど、言葉に詰まったあと、悲しく微笑んだ。
「ありがとう、真美さん。そして、ごめんね」
そう優しく呟いた進くんだったけど、私は初めて知ったかもしれない。
こんなにも、ありがとうとごめんねという言葉が悲しく響くことがあるだなんて……。
私は、今まで知らなかった……。