ルージュはキスのあとで
「さっき。出版社で俺が真美をメシに誘っただろう?」
「うん」
コクリと頷く。
そのとおりだ、さきほど出版社で皆藤さんとお茶しているときに正和くんが乱入してきて、そして……今に至るわけだから。
「あれな、俺はあることを確かめたくてな。わざと長谷部京介の前で誘ったんだ」
「わざと?」
「おう!」
ニカッと笑ってピースサインまでする正和くん。
どうして、そんなことを正和くんがしたのか。意図が読めない。
ムムッ、と考え込んでいる私を見て、楽しそうにニマニマ笑う正和くん。
「さぁ、どうしてそんなことをしたんでしょーか?」
どこかのクイズの司会者のように、私に答えを求めようとする。
本当、相変わらず私をからかって遊ぶのがお好きな人ですこと!
小さいころから、私のことを面倒みてくれていた正和くん。
たしかに頼れるお兄ちゃん的存在だったわけだけど、一方では私をからかって遊んでいた節もあったんじゃないかなぁと思う。
これだけ生き生きとして私にちょっかいを出してくるのだから、あながち間違いじゃないはずだ。
それは、今も現在進行形らしい……。
今までは恋愛フィルターがかかっていたから、あまり気が付かなかったけど、今となっては、かなりからかわれていたなぁと過去の出来事を思い出すことができる。
恋愛フィルターって、本当恐ろしいなぁ。
呆れ顔で正和くんを見ていると、さすがに本題に入ったほうがいいと理解したらしい。
その解釈は、正しいよ。うん。
これ以上、私をからかい続けているとへそ曲げますからね。
そのあたり、さすがは幼馴染。
よーく心得ていらっしゃる。