ルージュはキスのあとで
「はー、それにしてもなかなかに愉快だったぞ」
「だから、なにを言っているのか、さっぱーりなんだけど?」
「まぁ、そうカリカリするな。楽しいお話はこれからなんだからさ」
「?」
早く話してよ! と正和くんを突いていると、ちょうど注文していたものが運ばれた。
やっと運ばれてきたビールと餃子。
とりあえずは冷たいビールで乾杯ということで、ジョッキをお互いカチンと当てる。
キンキンに冷えている生ビールの喉越しは、やっぱり最高だった。
そして、熱々の餃子をラー油たっぷりのたれにつけて食べる。
熱くて舌を火傷しそうになってしまったけれど、肉汁たっぷり、皮がパリッとした焼き餃子は格別だった。
ビールを飲んだあと、正和くんは餃子を摘みながら口を開く。
「俺のことを、すんげぇ顔して睨んでたぜ? 長谷部京介」
「あー、うん。睨んでたね。でも、あれってば別に正和くんにってわけじゃ、」
違うと思うと否定しようとする私の声を制止させ、正和くんは断言した。
「いや、確実に俺を睨んでいたな」
クツクツとおかしそうに笑う正和くん。
昔から笑い上戸なところがあったけど、年齢を重ねてもっと酷くなった……?
呆れて正和くんを睨めば、肩を竦めて笑うのをやめた。
「あの男、俺に嫉妬したんだよ」
「嫉妬?」
「俺が真美を誘って連れだしたからな」
「まさか!」
そんなわけがあるはずがない。
あの、長谷部さんなんだから。
そんなことで、あんな怖い形相になるわけがないと思うのだけど……。
いや、待て待て。
もしかして、ずっと無視し続けている私に怒りを覚えていて、今日こそとっちめてやるぜ! 的な考えがあったのに、横から正和くんがでてきたから……。
それにホイホイ誘いに乗った私を見て不機嫌になったとか!?