ルージュはキスのあとで
「あのな、真美。神崎と長谷部は双子の兄弟だってことは……知っているか?」
「うん」
「で……神崎はな、かなりのブラコンだ」
「へ?」
あまりに衝撃的な答えに、私は目をパチパチと何度も瞬いた。
今、正和くんはなんて言ったの?
現実をなかなか受け止めることができない私に、正和くんは再度呟いた。
「あれだけ執着しているとなると……相当なもんだぜ?」
「進くんが、ブラコン……」
「長谷部の周りにくる女を片っ端から排除しているのは神崎 進だ」
「でも、ちょっと待って! なんでそれなのに秋菜さんをそそのかしたりなんて……」
そうだ。そこがうまく飲み込めない。
長谷部さんに近づく女の人を、片っ端から排除しているという進くん。
それなのに、長谷部さんに異様なほどの執着心をもっている秋菜さんに、どうしてそそのかしたりだなんてしたんだろう。
秋菜さんは、長谷部さんが苦手としているモデルだ。
そんなことぐらいは、進くんだってわかっているはずだ。
それなのに……なぜ?
それも、長谷部さんに近づく女の人は誰かれ構わず蹴散らしているというのなら……今回のケースは異例だ。
正和くんは、私が疑問に思うことがわかっていたようにニッと口角を上げた。
「決まってるだろう? 秋菜なら長谷部は必ず拒否することがわかっているからな。神崎からすれば秋菜は安全な女なわけだ」
「……なるほど」
「そして、真美のことを脅威に感じたんだろうな。長谷部の様子を見てさ」
「……そんなことって」
小さく呟いた。
だって、そんなことってあるんだろうか。
あの進くんが、こんなことを計画していたというのだろうか。
すべては、私と長谷部さんの関係を悪化させるためにだなんて……。