ルージュはキスのあとで
「……」
「教えてください。長谷部さんはどうして私にキスしたんですか?」
「……言わせるな」
「だって、わけわかんないですよ? どういうことですか?」
少しのからかいと、少しの興味。
そしてたくさんの期待を込めて。私は語尾を強めた。
「……好きだ。俺の手でお前をもっとキレイにしたい」
「!!」
やられたかもしれない。
体に力が入らない。顔が熱い。
そして、なにより長谷部さんが好きだっていう気持ちが高まりすぎて、どうにかなっちゃいそうだった。
「皆藤さんがお前を連れてきたときに思った。コイツを俺の手でキレイにしてやりたいってな」
「長谷部さん」
「そんなふうに思ったことは、初めてだった。そのときからすでに俺の気持ちは決まっていたんだろうな」
「……」
のぼせてしまいそうだった。
甘い言葉の数々に、卒倒しちゃいたくなった。
長谷部さんは、ジッと黒目がちの瞳で私を見つめる。
その視線はいつものように強い光を感じた。
「俺はなんでも直球勝負だ。回りくどいことは嫌いだ」
「長谷部さん」
腕を一度離し、私の顔を覗き込んだあと、今度は真正面から抱きしめられた。
そのときの長谷部さんの瞳が、私の心を捉える。
いつもはどこか冷めた視線なのに、今の長谷部さんの視線は……熱かった。
「お前を抱きたい……今すぐにだ」
すると、長谷部さんは私の首に唇を這わせる。
甘い痺れに、どうにかなってしまいそうになるのを必死に堪えて抵抗した。