ルージュはキスのあとで
賭けの勝敗
29 賭けの勝敗
『お前……またいらぬことをしているだろう?』
『なんだ京か。と、いうかいらぬこと? 別にいらぬことなんてしてないよ?』
『……』
『どう考えても京のためになるようなことしかしてないけどな』
電話先の進くんは、きっと長谷部さんがなんのために電話をかけてきたのかわかったのだろう。
しかし、自分の非は認めないつもりらしい。
私は静かに、ふたりのやりとりを傍観することにする。
『モデルの秋菜になにかけしかけただろう?』
『ああ。あのバカ女なら、すぐにのぼせあがると思ってね。京が、秋菜に気があるみたいだよって言っておいた』
私の知っている進くんじゃなかった。
思わず声をあげそうになるのを、グッと我慢する。
キラキラ王子様スマイルをして、物腰が柔らかく、誰とでもフレンドリーになりそうな進くん。
それが第一印象だった。
だけど、この進くんは……長谷部さんよりダークな感じがするのだけど……気のせいだろうか。
『あの女、京の好みじゃないだろう? だから京はずっと拒み続けるから大丈夫だと思ってね』
『……なんで、そんなことをする必要があったんだ?』
『……』
『進!』
静かな口調だけど、長谷部さんがめちゃくちゃ怒っているのが傍にいてわかった。
答えを促す長谷部さんに対し、黙秘を続ける進くん。
もう一度、長谷部さんが進くんの名前を呼ぶと、渋々といった感じで答えた。