ルージュはキスのあとで
それからのことは、実はあんまり覚えていない。
というか、思い出したくない。
顔から火が出てきてしまうし、言葉にならない叫び声を何度もあげてのたうちまわるぐらい悶絶してしまうから。
ただひとつだけ。
覚えておきたいことがある。
それは、何度も私のことを好きだといってくれた長谷部さんの顔。
いつもは冷酷な視線が、ものすごく情熱的だったこと。
そして……ベッドの中の長谷部さんは……粘着だったこと。
進くんが言っていたのは、こういうことだったのかもしれないと、改めてわかったのは外が明るくなってきたころだった。
「本当に、長谷部さんってば卑怯です!」
「俺は別に卑怯なことなど一切していない」
「っ!」
「お前が勝手に快感に踊らされて言っただけだろう?」
「ち、ちがっ! あれは長谷部さんに言わされたようなもので!」
シーツに包まり、真っ赤になって抗議する私の頬にキスをしたあと、スルリとベッドから降りた長谷部さん。
そのシルエットもキレイすぎて、全くもって悔しい。
ジーンズを穿いた長谷部さんは、私を振り返る。
「じゃあ、今。言ってみろよ?」
「え?」
「俺が欲しいのなら、その口で言ってみろ」
「長谷部さん」
長谷部さんが、あまりに嬉しそうに笑みを浮かべるから……。
私は思わず呟いていた。
「……好き、です」