ルージュはキスのあとで
ルージュはキスのあとで
30 ルージュはキスのあとで
「真美さん、これが最後の撮影になるから」
「え? でも、この前、最終テストって感じでフルメイク自分ですべてやりましたよね? カメラマンさんも入っていたし。皆藤さんからもインタビューを受けましたよね?」
突然呼び出しをされたのは、いつぞかやのスタジオ。
すでに体験モデルとしての仕事は、先日終わったはずだ。
ご苦労様会として、皆藤さんとカメラマンさん、長谷部さんと私の4人でご飯を食べに行ったばかりだ。
それなのに、今日は一体なんだというのだろうか。
「うん。そうなんだけどね。編集長が真美さんを推してて、ね」
「ん? なにをですか?」
編集長という言葉を聞いて、なんだか嫌な予感がした。
今まで、編集長という人が私の体験モデルの現場には来たことがない。
そのお偉方が、何故に私を推しているというのだろうか。
っていうか、推しているって……何を?
「まあまあ、いいじゃないの」
皆藤さんは、いつものごとくノラリクラリと話しをはぐらかす。
「じゃ、これ着てね!」
と、可愛いワンピースを渡され、部屋に閉じ込められてしまった。
誰もいない部屋。
状況がまったく把握できないが、とりあえずはこれを着なくちゃいけないということなんだろう。
渋々とワンピースに着替えると、今度はスタイリストさんがあれだこれだとアクセサリーを選んだり、靴を選んだり。
一体、これからなにがあるですか?
そう口を挟めないほど、真剣に仕事をしていて……。
ますます謎だけが深まる一方だ。
で、着せ替え人形が終わり、ぐったりしているとやっと皆藤さんが再びやってきた。