ルージュはキスのあとで
「……やっぱりやめておけばよかったな」
「え?」
「お前。今、最高に色っぽい」
「な、な、なに言って」
「それを全国のヤツラに見せるかと思うと……気が狂いそうだ」
「……どういうこと?」
どうやら今日のこのセッティングには、意味があるらしい。
いったい、どういうことなんだろうか。
「今から表紙の写真を撮るんだと」
「ひ、ひ、表紙って……まさか!!」
表紙と聞いて、思いつくのはひとつだけ。
ファッション雑誌には表紙がある。
特集を組んでいる女優さんだとか、専属モデルが華々しく飾る表紙のことだ。
もしかして、もしかして……。
考えただけでも嫌な予感しかしないんだけど。
「そう。そのまさかだ」
「ひぃぃぃ!!」
「お前の体験モデル。かなり反響があったらしいからな」
「そ、そ、そんなぁ」
「まぁ覚悟を決めて、キレイに撮ってもらってこい」
20代から30代のOLに支持がある『Princesa』。
その表紙に、私!?
ありえない。絶対にあり得ないってば!!
唖然として何もいえない私に、長谷部さんはいつものように人の悪い笑みを浮かべ、もう一度私の顔を覗きこんだ。
そして……。
「ルージュはキスのあとで……な?」
長谷部さんは手にルージュのパレットを持ったまま、もう一度、私たちはキスをした。
FIN
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
番外編も後日予定していますので、よろしければそちらも
お付き合いください。
橘 柚葉