ルージュはキスのあとで



「いいわねー! あなたみたいな子、好きだわ」


 皆藤さんが彩乃の手をギュッと握って大きく頷く。
 それに答えて、ありがとうございます、と嬉しそうに笑う彩乃。

 うん、私も彩乃が好きだ。

 私にはないものをいっぱいもっている彩乃は、時に嫉妬しちゃうけど……それでもやっぱり彩乃の生き方っていいなぁと思う。


 ウンウンと私も皆藤さんに同意していると、コンコンと扉をノックする音が聞こえた。


 
「はい、どうぞ」



 皆藤さんの返事とともに入ってきたのは、知らない男の人だった。

 彩乃が見せてくれた雑誌に載っていた『進さま』じゃないことだけはわかったけど……いったい誰なんだろう。

 そう思ったときだった。彩乃がガタンと椅子を倒して立ち上がって大声で叫んだ。



「京さまだ!」



 彩乃の叫び声を聞いて、その『京さま』と呼ばれた男性は顔を嫌そうに歪めたのだった。
 
 




 
 
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