ルージュはキスのあとで



「京介くん。今回の企画にピッタリの女の子、探し出したわよ」

「……」

「彼女なんだけどね。今、口説いている最中なのよ!」


 興奮気味に話す皆藤さんとは対照的で、京さまと呼ばれた男性は表情を変えない。

 ふーん、と皆藤さんに返事をしたあと、値踏みをするように私のことをジッと見つめてくる。

 なんだか居心地が悪いったらない。

 顔を歪める私の様子をみて、皆藤さんは面白そうに笑った。



「真美さんは、京介くんのこと知らないみたいね?」

「あ……ごめんなさい。私、そういうの疎くて」



 そういって肩を竦めると、彩乃がニンマリと笑った。



「真美ったら、進さまのことも知らなかったぐらいだもの」

「へぇー」



 興味深そうに皆藤さんに見つめられて、ますます居心地が悪くなって体を小さくさせた。 

 そんな私に、今までずっと黙っていたその男の人が口を開いた。



「アンタ、やる気あるのか?」

「は?」



 突然その男の人に言われて、なにがなんだかわからず首を傾げると、その男の人はますます怪訝な顔をした。

 いったい全体、突然何を言い出したのだろう。
 やる気って、なんのやる気?
 首を傾げるしかできない私を、その男性はますます怪訝そうに眉間に皺を寄せた。

 そんな私たちの様子を見て、皆藤さんは苦笑した。



「ごめん。京介くん。まだ企画の趣旨を彼女に話していないのよ」

「……そうですか」



 そういうと、近くにあった椅子にドカッと座る、京さま。

 あっけにとられていると皆藤さんは、改めてその男の人の紹介をしてくれた。






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