ルージュはキスのあとで
キラキラ王子の説得


6 キラキラ王子の説得



「真美さん、体験モデルやりたくないの?」

「えっと……はい」

 私は戸惑いながらも、はっきりと自分の意見を通した。

「どうして? 女の子なら飛びついてきそうなのにな。一応、京はその道のプロだよ?」

「あーはい。それは重々承知しているんですけど……」



 まさかその本人が威圧的で怖いから、とは言いづらい。
 私は苦笑をして誤魔化し、その場を繕う。


 長谷部さんが怖いというのももちろんあるのだけど、長谷部さんだけに限ったわけではない。
 男の人が怖いんだ。

 まともに友達としても、クラスメイトのような関係なども築いたことがない私にとって、男の人というのは宇宙人と一緒。

 未知の生き物なんだ。

 とくに見目麗しき人に関しては、脅威以外のなにものでもない。

 どうしても距離を置きたくなるのだ。
 だってどう接していけばいいのか、わからないんだもの。

 私が知っている男といえば、家族と本の中の主人公ぐらいだ。
 それも私は、めったに恋愛小説と呼ばれる類のものは読まない。

 推理モノだとか、歴史系のモノが主に好きで読んでいる。
 恋愛が絡むものもあるにはあるが、思わず目を背けたくなってしまう。
 あまり濃厚なシーンが出てきた場合は、飛ばして読んでしまうほどだ。
 それでも好きな作家の場合は頑張って読むのだけど……。


 これはもう、拒否反応といってもいいぐらいのレベルだと思う。

 
 社会人になって思ったことは、もう少し今までの人生で男性との接触を増やしておけばよかったなぁと。
 学生時代だって、それなりに遊びの誘いなどもあった。
 もちろん合コンや、コンパに誘われたこともある。
 しかし、それを片っ端から断ってきたのは、紛れもない自分だ。
 
 もう少し勇気を出してそれらの会に出席していたとしたら……。
 今の状況から少しは打破できていたんじゃないだろうか。
 


 まぁ、いまさら何を言ったって遅いんだけどね。



 とりあえず今勤めている会社の支店、そして私が所属している部署では、男の人はほとんどいない。

 いたとしてもおじさまばかり。自分の親世代の人ばかりだったから、どこか安心している。


 ってことはなんだ、私。
 自分と同じぐらいの世代の男性がダメということなのか。



なんとなく納得していると、横に座っていた進くんは困ったように笑った。






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