ルージュはキスのあとで
もうこれは、男の人が怖いとかそういう次元じゃない。
長谷部京介っていう人が怖いんだ。
男の人と話すのがムリっていう苦手意識プラス、クール王子とのマンツーマン。
想像しただけでムリだ。
やっぱりムリだ。
思わず声にならない叫び声をあげる私を見て、彩乃は一瞬きょとんとして目をパチパチと瞬いたあと、真剣な顔をして言った。
「なにいってんのよ、このバカ娘め」
「バ、バカってなによ」
「あのクールな雰囲気がいいんじゃないのよー。めちゃくちゃかっこよかったじゃん。目の保養になったなぁ。私も毎回真美について行こうかなぁ」
「頼む。毎回ついてきてくれ」
「んー、でも京さまに睨まれたらヤダしなぁ」
「ほら! 彩乃だって長谷部さんのこと怖いんじゃないのよ」
モグモグとウィンナーを食べながら目の前の彩乃をギロリと睨むと、彩乃は肩を竦めた。
「部外者は外に出ていてくれないか、とか言って私が入室するの断りそうじゃない? 京さまって」
「……」
「そう思わない? 真美」
「……言えてるかも」
確かに彩乃の言うとおり、長谷部さんならそういいそうな気がする。
というか、言うだろう。間違いなく。