ルージュはキスのあとで
ってことはなんだ!?
孤立援軍なし状態ということに……なるわけ?
思わずもっていたフォークをトレイに落としてしまった。
ますます行きたくなくなってきた。
とにかくムリだ。やっぱりムリだ。
進くんにはああいわれたものの、とてもじゃないけど長谷部さんにメイク指南してもらうだなんてムリ。絶対にムリだ。
頭を抱えながら、彩乃に助けを求める。
「彩乃、頼むからついてきてよ」
「……」
「お願い!」
手を合わせて頼み込んだ。
そうすると彩乃は盛大にため息を零したあと、「しかたがない、ついていってあげるから」とOKを出してくれた。
「ありがとう! 彩乃。恩に着る」
「でも、ついていくだけだし。部屋に入れてもらえるかはわかんないわよ?」
あきれたように肩を竦める彩乃に、私はコクコクと何度も頷いた。
「それでもいい! 彩乃がついてきてくれるなら心強い」
「……」
「これで断る勇気が……」
思わず本音がポロリと出てしまうと、彩乃は私をギロリと睨みつけた。
「断る……ですって?」
「あ、いや……えっと」
「もしかしてこの話、断るつもりじゃないでしょうね?」
「う、い……いやぁ」
あはは、と笑って誤魔化したのだが、目の前の彩乃は無表情で顔を近づけてきた。