ルージュはキスのあとで
いざ! 出陣!



8 いざ! 出陣!




「田島さまでございますね。お待ちしておりました。7階の第一会議室へどうぞ」

「あ、ありがとうございます」



 戦闘態勢のまま受付嬢に名前を名乗ると、すでに話は通っているようでにこやかにそう言われた。
 私も一応表面上はにこやかに対応したが、腹の中では固い決意に燃えていた。



 勝ちにいく!



 敵は長谷部さん。クール王子と名高い人相手にケンカをしにいくような気分だ。

 ズンズンと足音をたて、意気揚々とエレベーターに乗り込む。
 たくさんの人が乗り合わせていたが、6階までに大抵の人は降りていった。

 シンと静まり返るエレベーターの中。
 そこで私は闘志に燃えていた。



 なにがなんでも、断ってみせる!!




 グッと拳を握り、いつもより何倍か増しでテンションをあげて7階到着を待つ。

 チン。
 という音と振動とともに、開かれた扉。

 私は、覚悟を決めて第一歩を踏み出す。

 7階に降りたちキョロキョロと辺りを見渡すが、ロビーには誰もいなかった。
 この7階の会議室といえば、昨日私と彩乃が通された部屋だったはず。

 案内板を確認したあと、第一会議室を目指す。
 シンと静まり返る廊下。

 私は、会議室の扉の前でゴクリと唾を飲み込んだ。


 とにかくあのクールな視線に打ち勝たねばならないんだ、私は!


ムンと、口を真一文字に結び、気合を入れる。

 そうしなければ、あの長谷部さんに打ち勝てるような気がしないからだ。
 正直に言うと、かなりビビっているが、ここで逃げてもなにも始まらない。
 ヨシと、覚悟を決めて扉をノックした。



「どうぞ」




 すると、低く響く声で返事があった。
 きっと長谷部さんだろう。

 ゆっくりと扉を開けて部屋の中に入る。

 机がたくさん並べられている部屋の奥の辺り、ブラインドをあげて、すでに暗くなった外を眺めている長谷部さんがいた。

 私が入ってきたことがわかったのだろうか。
 長谷部さんは、ゆっくりと私のほうに体を向けた。









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