ルージュはキスのあとで
売り言葉に買い言葉
10 売り言葉に買い言葉
無言のままの私。
それは長谷部さんが言っていることを肯定しているようで嫌だったが、言葉が出てこなかった。
ただ、まっすぐと私を見つめている長谷部さんの視線が痛く感じた。
だから、ずっと下ばかり見て視線を逸らした。
まっすぐすぎる視線がツライ。そんなこともあるんだと私は思った。
沈黙を破ったのは長谷部さんだった。
「騙されたと思って、3ヶ月俺に付き合え」
「……」
テーブルの上で組まれた手。
ゴツゴツしていて大きい手なのに、とてもきれいだった。
それがなんだか……また敗北感を味わった。
「過去の傷なんて忘れるぐらいにお前を女として磨いてやる」
「……」
長谷部さんと視線を合わせるのが怖かった。
だけど……。
今、長谷部さんがどんな顔で私のことを見て、そしてこんな言葉を言っているのだろう。とても興味が湧いた。
クール王子と名高い長谷部さん。
キザなセリフもすんなりと言えるというのは、カッコイイ人の特権っていうやつなんだろうか。
長谷部さんの顔の表情を見てみたい。
でも、視線を合わせるのが怖い。
だけど……と、私はゆっくりと勇気を持って顔をあげた。
そう、好奇心に負けた……というわけだ。