ルージュはキスのあとで
淡く散った初恋
11 淡く散った初恋
「どーせ、そんなに変わりはしないって。だって私だもんね」
自分で言っていて悲しくなるが、これが現実。
本当のことだ。
付け焼刃でなんとかなるようなものでもない。
もし賭けに負けたらどうしよう、とか色々と悩んでしまったが、悩むほどのことでもない。
だって、所詮は私だもん。
女子力低下中のOLだし、心配いらないでしょ。
ってか、それもどうかと思うから、なかなかに厄介だ。
どちらに転んだとしても、私にダメージが残るのは必須。
これって、どちらも私に不利じゃないかしら?
長谷部さんと一対一で対決してから一夜が明けた。
今日は土曜日。仕事も休みで、のんびりゴロゴロしたい。
ゆっくりと起きて、洗濯機を回しつつ朝ごはんの準備をすることにした。
ついでだから一週間分のご飯を一緒に炊く。冷凍ご飯にしておくためだ。
こうしておけば、仕事が忙しくて作る気が失せたときでも、ちょこちょことお惣菜を買ってくれば何とかなるし、一人暮らしの必需品だ。
炊ける間に、お味噌汁を作っておこうかとネギを切りながら、ふいに昨夜のことを思い出す。
結局、長谷部さんにうまいこと言われて気がつけば体験モデルをやることになってしまった。
本当は断るはずで出版社に行ったのに、どうしてこうなったのか。
しかし、ああまで言われて断れるはずもない。
冷静になって考えてみれば、長谷部さんにうまく乗せられたということだろうけど、あのときの私は、とにかく長谷部さんに負けたくないと思ってしまったのだからしかたがない。
とにかく、目の前の男には負けたくない。
その一心だった。
「万が一、見た目もよくなってメイクの腕も上がったとしても、なんていったって私だもんね」
メイクでいくらでも顔の雰囲気などは変えることができたとしても、中身はそうそう変わるものでもない。
女子力低下気味で、お洒落に無頓着。
趣味といえば、本を読み漁ることぐらい。
休日はこれ幸いとゴロゴロと家でのんびりするか、図書館に行って本を借りるぐらいだ。
残念ながら女の子らしいことを一切やらずに、この年までやってきた。
とうてい男が声をかけずにいられない女になるとは……とても考えがたい。
本当、自分で言っていて悲しくなるが本当のことだ。