ルージュはキスのあとで
たぶん……今の格好とメイクの状態を撮るということは、雑誌のほうでは大歓迎だとは思う。
だって最初に強烈な写真をおさめて掲載すれば記事としてはオイシイはずだし。
それでも……せめてメイク直しをさせてください。
それさえもさせてくれそうにもない雰囲気にため息しか出てこない。
……うん、もちろんやるのは私ですからね。
劇的な変化が待っているとはとても思えないけど、このテカった鼻の頭ぐらいなんとかしたいと思うぐらいの女心は持ち合わせているんだけど。
それに洋服もだ。
いつもどおりのジーンズに、カットソーというなんとも色気など皆無な装いの私。
さすがに、これはいただけない。
こんなことなら、彩乃に相談してなにかしら服を買っておいて、今日着てくればよかった。
前もって皆藤さんも言っておいてくれれば、こんなに恥ずかしい思いをしなくてもすんだのに。
もう、皆藤さんへの恨み節しか出てこない。
メイクはしかたがない。
だけど、だけどさー。
せめて服だけでもなんとかしておきたかったんですけど。
そんな私の恥じらいなどおかまいなしとばかりに、皆藤さんは豪快に笑う。
「大丈夫、大丈夫。真美さん。いつもどおりだから」
「……」
「これで撮っちゃいましょー」
「……」
いつもどおりって、その通りだけど包み隠さず衣着せぬ言い方は、やはり皆藤さんらしいというべきかどうか。
皆藤さんの憎いぐらいの笑い声がスタジオ内に響き渡った。