ルージュはキスのあとで
見知らぬ番号からの電話
14 見知らぬ番号からの電話
「……あれ?」
見知らぬ番号からの電話に首を傾げた。
昨日、なんとか雑誌に載せるための写真撮りが終わった。
もう、なにがなんだかわからない、というのが感想だった。
グルグルといろんな角度で写真を撮られていたような……気がする。
何台ものカメラや、大勢のスタッフさんが一心に私を見つめている。
そう考えただけで、足が竦む思いだった。
精神的に疲れて、ヘロヘロになって泥のように眠り込んだおかげで、今日はちょっと調子がいい。
いつもどおり、朝早くから起きて、自分のために朝ごはんをつくり、掃除なんかをちょこちょことしていたら、携帯に電話がかかってきたのだ。
ずっと鳴り続ける電話。
しかたなく出ると、名乗りもせずにいきなり本題に入り始めた。
「今日は仕事休みだと皆藤さんから聞いたが……ヒマか?」
「……」
この低くて、響きのある艶っぽい声。
そして、どこか冷たさを感じるような雰囲気。
この声は……聞き覚えがある。
大きくため息を零したあと、電話の主に声をかけた。
「あのですね。まずは名乗りましょうよ?」
「ああ、悪い。急いでたから」
「……だから、どちらさまでしょうか?」
すぐに誰かはわかったが、いまだ自分の名前を名乗らない電話の主にわざとらしく声をかけると、不機嫌そうな声が聞こえた。