ルージュはキスのあとで
ふぅ、と大きくため息をついていると、さきほど自分が店員に頼んだカクテルがきたので、それを一口飲む。
そして自分以外は盛り上がっている合コンの席を見渡して、誰にもばれないように小さく息を吐いた。
やっぱり入り口に近い隅っこの席にしておいてよかった。
これならいつだって帰ることができる。
自分が陣取った席の好都合さに、ホッと胸を撫で下ろす。
どうも、私はやっぱりこういう場所は似合わないし、居辛い。
ほかの女の子を見ても、私はどうも浮きまくっている。
彩乃のお友達だという3人は、彩乃の友達というだけあってどの子もファッションに敏感な様子だ。
髪だってキューティクルが半端なくツルンとしているし、顔だってもちろんかわいい。
それにお手入れの行き届いている頬は、赤ちゃんみたいにきめ細かくてキレイだ。
指先だってキレイに整えられていて、かわいいネイルが施されてる。
着ているお洋服だって、そうだ。
きっと流行の最先端のものを着ているのだろう。
この前彩乃に借りたファッション雑誌に載っていたような洋服だ。
彩乃を含め、ファッション雑誌から飛び出したといった感じで、みんな洗練されていた。
それがみんな自分の特徴をいかしていて、とても似合っている。
それに比べ、私ときたら。
もちろん突然のお誘いだったのだから、おしゃれらしいおしゃれなんてできなかったわけだけど、それにしても酷い。
酷すぎる。
穿き古したデニムに、カットソー。そしてコートを羽織って出来上がり。
お洒落の「お」の字もない私に、自分で少し落ち込む。
もし、前もって合コンのお誘いを受けていたとしても、今日とあまり変わり映えはしていなかっただろう。
自分の部屋にあるワードローブには、スカートというものがないのだから。
唯一穿くスカートといえば、会社の事務服のみという、なんとも徹底したワードローブだ。
まぁ、容姿はしょうがない。
そしてセンスも、なにもしていない以上磨かれるものでもないので、しかたないとしておこう。
だけど、今の会話はいただけなかったかもしれない。
いや、絶対にいただけなかった。
今は男女がお知り合いになるための第一関門、合コン。
その席で、さすがにこれじゃあまずいだろう。
可愛らしさの欠片もない会話だったかも、と今更ながらに後悔をした。
ため息を零しながら、パクリと目の前にあるポテトと一つ摘んで口に入れる。