ルージュはキスのあとで
魔法にかかった干物姫
16 魔法にかかった干物姫
「で?」
「はい?」
「どうだった?」
「……なにがですか?」
主語がありませんよ、と私はオレンジジュースを飲みながら目の前に座る長谷部さんを見やった。
一方の長谷部さんといえば、コーヒー片手に涼しい顔をしている。
相変わらずの「クール王子」健在だ。
今、ホール近くの喫茶店にて、遅めのランチを食べたところ。
アフタードリンクが運ばれて、一息ついたのを見計らって長谷部さんが切り出した。
「昔の男に会った感想は?」
「……」
どうやら、昨日の私の様子も皆藤さんから逐一報告がいっているようですね。
はい、はい、はい。
もう、慣れました。
なんだか長谷部さんが私の保護者みたいな立場になっていて、なんだかおかしかった。
だけど、なにもかも見透かされているのも癪なので、ここはとぼけて回避という手を使ってみる。
「なんのことだか、さっぱり」
オレンジジュースを飲みながら、私は視線を逸らした。
なんでも見透かしてくる長谷部さんだ、私の顔を見れば一目瞭然だろう。
だからこそ、逃げておく。
まぁね。すぐに掴まるとは思いますけどね。
はい、無駄な努力ですよね。
面白くなくて私は、オレンジジュースが入ったグラスを指で弄った。