ルージュはキスのあとで
「あ、これ美味しい」
よく居酒屋で出される“いわゆる冷凍食品”ではなくて、きちんとお店で生のジャガイモから揚げていると思われるポテトに思わず顔が綻んだ。
こうなったらヤケ食いだ。
誰も私を見ていないなら好都合。
ガッツリ食べて、意気消沈してしまった気持ちを向上させなくちゃ。
で、頃合を見て抜け出そう。
彩乃にきちんと断っていけば、なんの問題もないだろう。
だって、ほかの男の人は全員私に背を向けてしまっているのだもの。
肩を竦めて、とりあえずは目の前にある食べ物を平らげていく。
ほかのメンバーはお話に夢中で、テーブルに運び込まれてきた温かくておいしい料理には手をつけていないという、なんとももったいないことをしている。
温かい料理は温かいうちが美味!
私は、テーブルの上にある料理を一通り食べたあと、トイレに立ったついでに彩乃を呼び出した。
「ごめん、私ここで帰るね。はい、これ参加費」
「ごめん。なんか私、出すぎたことしちゃったよね……」
この惨事を見て、彩乃のほうがガックリと項垂れてしまっている。
今日の合コンは、綾乃が「少しは出会いも大切だよ」といって連れてきてくれたのだ。
最初は渋った私だったけど、少しの興味と好奇心でついてきてしまった。
そして惨敗。
そのことについて彩乃のほうがダメージが大きいなんて。
なんか、こちらのほうが申し訳なくなってくる。
「別に彩乃が悪いわけじゃないよ。いやなら私、最初から来てないし。私の性格わかってるでしょ?」
「……ん。そうだけど」
「だから、彩乃が気にすることじゃないの」
ありがとう、そう呟く彩乃はやっぱりかわいかった。
ただ、この子はどうにもただでは起きあがらないらしい。
決意に満ちた表情を浮かべて、私を見上げる。
「じゃあ、今度は理系メンズを揃えておく! いやいや、本が好きな人っていえば文系か」
「おいおい、あのね、彩乃……」
「真美。今度はさ、めっちゃ気合いれてメンツ揃えるから! こうなったら合コンなんてまどろっこしいことしてないで、真美ひとり対5人メンズぐらいの勢いでやろうか」
「……そりゃまた、すごいことを考え始めましたなぁ」
頬を引き攣らせている私にも気がつかず、綾乃は力説をしだす。