ルージュはキスのあとで
クール王子の恋人



19 クール王子の彼女



「アンタね? 体験モデルやっているっていう女は」

「……どちら様ですか?」



 突然私の目の前に現れたその女の人は、私を睨みつけて仁王立ちをしている。

 確かにナイスバディの持ち主だし、顔だってきれいだけど……一体、この人は誰だ?

 思い当たる人がいなくて首を傾げていると、目の前の女性は痺れを切らしたようにダンとヒールで音をたてた。



「ケンカ売っているの? アンタ」

「いや……ケンカ売るつもりは毛頭ないんですが……」



 きらびやかなファッションに身を包んだスタイルバッチリのその女性は、今だ睨みの体制を崩すことはない。

 威圧的な態度。

 
 どこかのだれかさんみたいだなとは思ったけど、目の前の女の人からの負のオーラは半端ない。
 


「えっと……モデルさん……とか?」


 
 なんとなく雑誌で見たことあるような気がして、一か八かで聞いてみればまさにビンゴだったらしい。

 威圧的な態度が、少しだけ優越感に変わり、その女性は鼻でフンと笑ってみせた。

 腕を組み、胸をムンと反らす。
 
 私は女王様なのよ、とばかりのその態度に、思わず内心苦笑した。

 それにしても、モデルさんが私になんの用だろうか。
 どんなに考えても、共通点などはないし、面識も……まずないと思われる。

 なのに、何故にこんなに睨みつけられなくちゃならないわけ?

 どこか理不尽に感じ、私も思わず眉を顰めた。

 それが目の前の彼女には気に食わなかったのだろう。

 ますますキリリと眉を上げた。



「まさか、私のこと知らないなんてことは……ないわよね?」




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