ルージュはキスのあとで
モヤモヤとドキドキは紙一重
20 モヤモヤとドキドキは紙一重
モヤモヤする。
こころの中が、靄がかかったようで何も見えない。
自分がなにに戸惑っていて、なにに苛立ちを覚えているのか。
自分でもよくわからなかった。
ただ、ひとつ思い当たるとすれば、先日会ったモデルの秋菜さんのひと言だった。
「京介と付き合っているのは、この私」
勝ち誇ったような顔で、私を見下ろしていたあの人。
私のことをジロジロと見て、たいしたことないと鼻で笑ったり、私に長谷部さんに近づかないようにと牽制したり。
そのことがずっと頭から離れない。
だけど、どうしても解せない。
悪いけど、長谷部さんがあの人を選ぶだなんて……思いたくない。
結局は、見た目がキレイな人がいいってことなんだろうか。
男って、やっぱり外見がキレイな人のほうがいいってことなの?
そりゃぁ、不細工よりはキレイなほうがいいかもしれない。
だけど、どうしても……納得いかない。
「長谷部さん、あの人と付き合っているんだ」
モデルの秋菜さんがそう宣言をしていたんだ。たぶん、間違いはないんだろう。
何故? どうして?
そんなことばかりが過ぎる。
どうして、あんな人と?
長谷部さんなら、もっといい人がみつかるはずなのに!
そう考えると、何故かイラついた。
なににイラついているのか自分でもよくわからないんだけど……。
性格があまりよろしくなさそうな秋菜さんというモデルと付き合っている長谷部さんのことに腹をたてているのだろうか。