夏色狂想曲


「皐月…」








頬に添えようとした手は

肌をすり抜けて、突き抜けた。



「…さつ、き」


いやだ、いやだ、いやだ
いやだ、いやだ、いやだ


少し焼けたその肌に触れたいのに
サラサラの髪を掬いたいのに
綺麗な鎖骨をなぞりたいのに


そこに在るのは
ただ、空気という無感触



「あ…あ、あ…」


どんなに手を伸ばしても触れられない
どんなに握り締めても掴めない


「あああぁっ…ああぁ、ああ…」



トドカナイ
フレラレナイ
マジワレナイ


ほんとは、ほんとは、ほんとは分かってた。分かってたのに、分かりたくなかった。





皐月が、もうとっくの昔から皐月じゃないってこと―――


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