夏色狂想曲



「さつきぃ…」


もう終わったこと、なんて嘘だった。
あたしが逃げ続けていたから、何も終わってなかった。

365日前から今までのこと
長い8月31日の始まりから今までのこと

それは、受けとめなきゃいけないことはあまりに重すぎて



顔を伏せることもできずに
涙を拭うこともできずに

ただ、今まで押し込めていた涙と恐怖と願望を吐き出すことしかできなかった。


笑顔の裏で、いつの間にか弾けんばかりに溜まっていた涙

皐月を失うことへの恐怖

何より、今まで目を背け続けてきた願望



土手の草花は揺れ
川は優しく流れ
ゆったりとした昼下がりに

あたしの泣き声しか聞こえない。






「皐月に…触りたい…」


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