夏色狂想曲


分かるような、分からないような、そんな曖昧な印象を受けた。

分からないこともないけど、俺は振り返るより前を見続けたい。

幸せをいつまでも大切に眺めているより、新しい幸せに手を伸ばしたい。



「…あたし懐古癖があるからさ~、どうしても過去にしがみついちゃうんだよね。

過ごした時間を振り返るってことは、それくらい幸せだったってことで。その幸せに…依存していたくなる」


そう話す笑花があまりにも儚くて、俺は笑花の肩を抱いてそっと唇を合わせた。

なんでそうしたのか。無意識だった。


そんな俺に笑花は

「…ありがとう」

そう一言だけ言って笑った。小さな花が綻ぶような、その笑顔が、俺は好き。


「…俺が、ずっと一緒にいる。それで、過去を振り返る余裕なんかないくらい幸せの中連れ回して、駆け抜けてやるから」


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