夏色狂想曲
笑花から視線を外すのが惜しくて、手を振りながら横断歩道を渡り始める。
そして、笑花が、ゆっくりと、目を見開いてゆく。
ゆらゆらと振っていた手をこっちに伸ばそうとしながら、
その口もまた、何かを言おうとして開かれてゆく。
スローモーションの世界。
夕日に燃やされた空と
その下で、ゆっくりと、顔を歪めていく笑花が
俺の、最期の記憶
刹那…――――
「さつきいいいいいいいいいぃいいいぃっ…!!!」
俺の意識は暗闇の中に叩き込まれた。
長い長い、
8月31日の始まり…―――