夏色狂想曲
◇。.
「うわあああぁああぁあぁ」
分かってた、分かってた。
分かってたのに分かりたくなかったあたしは殻に閉じこもった。あの瞬間から今まで、8月31日に依存し続けた。
何も見えない、何も聞こえない。
ただひたすら土手に通った。
暑さが弱まっても、緑が紅葉に変わっても、肌寒さを感じても、枯葉が散っても、雪が舞っても、風に打たれても、年が明けても、雪が溶けて新芽が出ても、寒さが和らいでも、桜が咲いても、雨に濡れても、
そしてまた、緑揺れるこの季節になっても
1日も欠かさず、一心不乱にここに来た。
あの日から365日経っているのに、あたしはまだ365日前の8月31日を生き続けている。
あたしが皐月を縛り付けているから、皐月もあそこから動けない。
ズルくて歪んだ空間でもいいからと、皐月を失いたくなかったあたしのエゴ。