夏色狂想曲
聞いてみても、毎回のごとく返事はない。
「そろそろ素直になりなよ皐月~。いっつもいっつも、あたしばっかじゃん」
皐月はいっつもそうだ。
チャラけててガキみたいに喜怒哀楽が激しいのに、恋愛に関しては何も伝わらない。
肝心なことだけ、滅多に教えてくれないの。
…まあ、でもいいんだ。
分かってるから、ちゃんと。
皐月があたしを好きなこと。それが分かるだけで、満足だから。
じっと目を逸らさず見つめてると、少し伸びたショコラ色の襟足を手でいじりだす。
何か迷ってるときの皐月のクセ。わずかに下唇を噛むのは、照れ隠しのしるし。
あたしばっかりだけど、でもちゃんと皐月も教えてくれるから。
何度でも、確かめればいい。