夏色狂想曲


「へへっ、皐月って素直じゃないようで、実はすっごい素直だよね」


心っていうか、体が。
その言葉は飲み込んだ。


あたしがにやにやしていると、皐月は消費期限切れの食パンを食べたような顔をしてあたしを見たけど、そんな表情だって

―――大切な、皐月


前までは、そんな顔した皐月の両頬を引っ張ったりしてたけど

ねえ、なんでかな


今は凄く愛しくて、慈しみたくて、優しく心に刻みたい。


「皐月ぃ…空が青いね。雲一つないね」


か細い、蚊のなくような声を出したあたしを、また皐月は優しく見つめてクスリと笑った。


癪だったから皐月に舌を出して、青く眩しい空を仰いだ。

そんなあたしの顔は、いつものように笑顔なのだけど。


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