保健室のアイツ
――何処からともなく聞こえる、聞き覚えのある声。



空耳……?



…なんかじゃない!



2つあるベッドの奥のカーテンを開けるとアイツがいた。



「ちょっと相川君、何してるの」



私が呆れたようにため息混じりに言うと、彼はいつものようにニッと笑った。



「だってお腹が痛いんだもん」


猫なで声でその綺麗な瞳をうるうるさせて、縋るような目で私を見る彼。


彼は名役者だ。


しかーし私は騙されない。


「仮病でしょ、授業始まってるわよ、早く戻りなさい」



そう言葉を投げ捨てフイッと彼に背中を向けた時だった。
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