保健室のアイツ
腕を捕まれグイッと引っ張られた。



そして、あらぬことに私は彼の膝の上に座る態勢になってしまったのだ。



「ももちゃんって軽いんだね」



耳元で生ぬるい彼の吐息がかかり、耳がカーッと熱を帯びる。



「相川君っ!」


私が立ち上がろうとすると、再び彼が腕を引っ張る。


「ちょっと…誰か来たらどうするの」



私は高鳴る心臓を抑え、冷静ぶった口調で話す。



「もう授業始まってるし誰も来ないよ」



再び彼の息が耳を掠める。

グランドからは体育の授業の生徒達の声が聞こえる。


それよりも近くに彼の吐息が私の鼓膜を揺らしていた。
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