Reset — リセット —
"天使”の後ろ姿が消えた方向を見ながら
その場で軽く放心状態になっていた
瞬きを何度かして現実世界へと
自分を引きずり出す
ふと地面に視線を落とすと
「羽…?」
そこには真っ黒い羽が落ちていた
そう、”天使”と同じ…
”天使”の背中にはカラスのように
大きくて真っ黒い羽が付いていた、というより生えていた
暗いせいで見間違えたのだと自分に言い聞かせる
とても人間ではあり得ない
背中に真っ黒い羽が生えた人間だなんて聞いた事も無い
今さっき起こった事が現実離れし過ぎている
頭の中を整理したい…
ふと時計を見た
が、不思議な事に針は一歩も進んでいない
まるで、時間が”天使”の存在していた時だけ止まっていたかのようだ…
”無かった事に…”か
本当に現実離れし過ぎている。
夢でも見ていたのでは無いかとさえ疑ってしまいそうになる
そうしている間にも冷たい風は
徐々に俺の体温を奪っていき
これが現実なのだと嫌でも思い知らされた
俺は早々と残りの道を通り
急いで家の中へと入った