Believe
「こんばんは。今、電話しても大丈夫ですか?」とだけ入れ送信する。

待つこと30分。

メールの返事がこない。

(仕事か…)

飲み物を取りに台所へ行こうと立ち上がった瞬間

♪♪♪♪♪

携帯が鳴った。

(この着信音は稲葉さんからだ)

アタフタしているうちに電話は切れてしまう。

返事をしようと思ってメールを入れたのに、いざ電話がかかってきてしまうと勇気がでない…

携帯とにらめっこしたまま10分。

(よし!)

覚悟を決めて稲葉さんに電話をかけた。

コールが鳴るたび、私の胸の高鳴りは激しくなっていく。

5コール目。

(出ないや)と切ろうとした時

「もしもし」と慌てた様子で稲葉さんが電話に出た。

「もしもし、優希です。って画面に出てますよね」

緊張し過ぎて何を言ってるんだか自分でも分からない。

「あはは。こんばんは」と優しい声の稲葉さん。

「こ、こんばんは。今、大丈夫ですか?」

「今、仕事が終わったところなんだ」

「お疲れ様です。さっきは電話に出れなくてすみません」

「大丈夫だよ」

その後、お互いに黙り込んでしまった。

(どうしよう…言わなくちゃ。でも何て切り出せばいいの?)
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