Believe
着いた所は、昨日私がギターを弾きに来た場所だった。

稲葉さんと私は外に出る。

「昼間も綺麗だけど、夜桜も綺麗だね。久しぶりだよ。こうやって桜を見に来るなんて」と稲葉さん。

「そうなんですか?本当、綺麗ですね」

と2人で桜を見ていた。

「こっちに道があるけど、上がって行けるの?」と稲葉さん。

「はい。行けますよ」

と2人で歩いて行った。

上に着くと、

「優希ちゃん、ちょっと座ろっか」

2人でベンチに座る。

提灯の灯りが私たちを照らしている。

沈黙が続く。

(言わなくちゃ…)

私は口を開いた。

「あの…稲葉さん…」

「うん?」と稲葉さんが私の方を向く。

緊張して私は稲葉さんの顔をまともに見ることが出来ない。

「ちょっと聞いてもいいですか?」と私。

「何でも聞いて」と笑顔で答える稲葉さん。

「あの…何で私なんかと付き合いたいと思ったんですか?」と私はストレートに聞く。

「実は……俺の一目惚れ」と恥ずかしそうに言う稲葉さん。

稲葉さんが話を続ける。

「前、ライブで優希ちゃん2列目にいた事があったでしょ?その時、ステージの上から優希ちゃんを発見してさ」

「えーっ、あのライブ1年くらい前ですよ?」

稲葉さんの言葉に驚いてしまい私の声は大きくなってしまった。

「そうなんだよ。でも、あの時は本当にビックリしたよ。偶然とは言え、優希ちゃんに会うとは夢にも思って無かったよ」と笑う稲葉さん。

「私もあんな所で稲葉さんに会うなんてビックリしましたよー」

「でも名前も分からないし、俺からは動きようがなかったんだ。そしたら、あの場所で会って、あの子だって分かったから思いきって連絡先を聞いたんだ」と照れる稲葉さん。
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