Believe
「今、抱えてる優希ちゃんの不安や悩みを言ってみて」と優しく言う稲葉さん。

「私なんかが、稲葉さんと付き合っていいのかなって事が1番の悩みです。それと、芸能人の方は綺麗な人が沢山いるから、私なんかすぐ飽きられちゃったらどうしようっていう不安もあります…」

すると、急に稲葉さんが立ち上がった。

「俺が優希ちゃんに対する気持ちは、そんな中途半端な気持ちじゃないよ。普通の恋人たちみたいには会ったりは出来ないとは思うけど、優希ちゃんを不安な思いはさせないから。直ぐに信じる事が出来なくてもいい。俺は、優希ちゃんが好きです。付き合って下さい」

真剣な表情で言う稲葉さん。

私の瞳から1粒の涙がこぼれる。

こんなに真剣に言ってくれる稲葉さん。

芸能人『稲葉 拓斗』ではなく、素顔の『稲葉 拓斗』として私を好きと言ってくれている。

そう思うと私は嬉しくて涙が止まらなかった。

「私も…稲葉さんが好きです。アーティストの『稲葉さん』ではなく、今こうして私の前にいる素顔の『稲葉さん』が好きです。こんな私ですが、これから、よろしくお願いします」

と精一杯の気持ちを私は稲葉さんに伝えた。

私の顔は涙でグチャグチャ。

その時、稲葉さんが私を抱き寄せる。

スッポリと稲葉さんの腕の中に優しく包まれながら、私の涙は止まることは無かった。

「ありがとう、優希ちゃん。こちらこそ、よろしくね」

稲葉さんの抱き締めている腕が少し強くなった。
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