Believe
「どうしても寂しくて我慢出来なくなったら、ちゃんと言ってよ。すっ飛んで行くから」

「はい。分かりました」

「あっ、そうだ!今度会った時、一緒に写メ撮ろうよ。俺も寂しくなったらその写メを見て頑張るからさ。約束だよ!」

「はい。約束します」

「じゃーまた連絡するね。おやすみ、優希」

(え、初めて優希って呼び捨てで呼ばれた。嬉しいけど、聞き慣れなくて恥ずかしい…)

「おやすみなさい。稲葉さん」

「もう、稲葉さんって呼び方変えない!拓斗でいいからさ!それと、敬語じゃなくていいって」

「呼び捨てには出来ないですよ…じゃー徐々にって事で」

「そうだね。おやすみ」

「おやすみなさい」

電話を切った。

声を聞けるだけで本当に嬉しい。

なかなか会えないのを承知で付き合ったんだもん。

私、会えなくても頑張れる。

私は眠りにつく。


それから1週間が経った。

忙しくなるとは聞いていたが、稲葉さんの忙しさは凄かった。

朝の芸能ニュースでは新曲のコメント。

夜は歌番組とこの1週間、テレビで稲葉さんを見ない日は1日も無かった。

私も稲葉さんが出演する番組は必ずチェックしている。

ファンの時も大体は見ていたが、今は、見方が違っている。

そんな忙しい中でも欠かさず私に連絡をくれる稲葉さん。

それが凄く嬉しかった。

(あっ、そうだ。泉に報告しよう)

泉に電話をかける。
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