それでも君を
《俺は、ユリに会いたいんだよ》
そんなこと言われると、また期待しちゃうじゃない。
素直に嬉しいと思う自分は二年前と何も変わってなかったみたいだ。
馬鹿みたい。
「…奥さん、サキ先輩のところ、帰らないの?」
サキ先輩とはヤスくんの奥さんで私の先輩。美人で仕事も出来て、私の憧れだった。
《サキには明々後日帰るって伝えてるから大丈夫たよ。ユリとゆっくり会えるように嘘ついたんだけど。》
まるで私のために嘘ついたみたいな言い方。昔から私に罪悪感みたいなものを少し与えてくるんだ。お前も共犯だぞって言うみたいに。だけどそんなのでさえ、嬉しく感じてしまうんだ。私、いつからこんな狂ったんだろう。
帰らないって答えてくれないかな、なんて淡い期待も見事に打ち砕かれて、彼は昔から欲張りな人だったななんてぼんやり思い返した。
彼は昔から私だけ、は選んではくれなかった。
それはきっと昔もいまもずっと変わらないだろう。
それでも会いたいと思ってしまう私はきっと狂ってるんだ。
ねえヤスくん、本当は会いたくてたまらないよ。