*春、それは出会いと別れの季節*
「……私が桜の木に話しかけてなんか悪い?」

「いや、悪くないけど
なんか面白いな」

 彼はまだ笑い出している。

面白くてもそこまで笑わなくてもいいじゃないか

「…………」

 私は不機嫌そうに無言でいると

「こんなに笑って悪かったな」

 彼は笑うのをやめて謝ってきた。

「別にいいよ」

 「桜木美鈴……という名前
お前に似合ってるし可愛い名前だな」

 急に彼は私の頭を優しく撫ぜる。

 今日会ったばっかな人に頭を撫ぜられるなんて予想外な出来事だった。

 しかも、自分の名前を似合っていて可愛いなんて言われるとは思ってもみなかった。

 そんな事をされる&言われるとなんか恥ずかしい

「お前……顔が赤いじゃないか
もしかして俺の顔がカッコイイから惚れたか?」


 これって冗談で言ってるの?本気で言ってるの?と迷ったけど
彼の自信満々の顔を見たら本気で言っている事が分かる

「なわけないじゃん
……貴方ってナルシ?」

 私は思ったことをはっきり彼に言った。
そう言った後、私の顔はいつの間にか赤くなくなっていた。

「さぁな」

 彼は曖昧な返事をしたけど
私は彼がナルシな気がする

「そうじゃなかったら、どうして顔が赤かったんだよ?」

「それは……」

 頭を撫ぜられて自分の名前を似合っていて可愛いって言われたからなんて
絶対に言えるわけがない!

「それは?」

「暑いから」

私がそう言った途端また彼は再び笑い出した。

「なんでまた笑うの!?」

「だってな
今は春だろ?」

 そう言った後に

まだ夏じゃないしと言う彼の髪に桜の花びらが一片舞い落ちてきた。
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