金属バットを買って待つ(仮題)
始まり
その年ローリングストーンズは、五十代後半にもかかわらずニューアルバムを発表して世界ツアーを行っていた。
ストーンズのメンバーは、元気だったが俺は、参っていた。
「こら!!元山か!息子だろう。分かってんだよ。
いい加減観念しろ。今どこだ!!
お前も社員だったんだから責任あるんだぞ!!」
何度目の電話だろうか。
俺は、身体の調子が良くなかった。
少し熱があるようだったし疲れていた。
三日も車の中で寝て、あらゆる電話が俺の、携帯に集中してるようだったし、逃げるまでの疲れが今になってどっと出たような気がした。
親父の会社が倒産した事が全ての原因だった。
法律上は、問題なく倒産したのだが、ギリギリまで倒産する事は、親族しか知らなかった。
とにかく、街から離れるように言われ家からも一時的に出るように言われた。
何があるか分からないからだろう。
期間は、二週間から一ヶ月と言う大雑把な物だった。
俺は、最小限の着替えと何とか少しの金を集めて車で家を出た。
返事をせずに携帯を切ると、車を降りて近くの公園まで行き顔を洗いタオルを濡らして上半身裸になり簡単に身体を拭いた。
公園は、夜で誰もいなかった。
虫の泣く声がどこからか聞こえて来た。
俺は、ベンチに座り煙草を取り出して一服する。
この三ヶ月ほどは、毎日親族が集まり今後どうするか話し会って来た。
結果は、倒産だった。
俺達兄弟三人は、会社の為に消費者金融や色々な所からお金を借りていたせいで自己破産手続きに入っていた。
俺は、次男だったが兄は、病気がちな為に一応会社に入っていたがほとんど働かずに親父のお陰で給料を貰っている状態が続いていたが倒産前にも、会社に籍があったので当然のように巻き込まれた。
兄は、それが不満のようだったが会社に入ってなかった妹まで巻き込まれいるのを知ると渋々納得したようだった。
俺は、親父の命令は、絶対だと思い必死に金策と会社の事のストレスから身体の調子を崩しがちになっていた、親父の側にいた。
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