金属バットを買って待つ(仮題)
俺は、約六年ほど作業員生活を続けた。
親父が会社を立ち上げたのは、高校生の時に知っていたが、小さい会社だったし僕には、あまり関係無いと思っていたが関西で現場をやってる時に、親戚のおじさんから連絡が入り飯を食いに行こうと言われた。
山の中の辺鄙な所から街に出て久しぶりに父親の弟になるおじさんに会った。
待ち合わせ場所の喫茶店に行くとスーツをバシッと着こなし髪をオールバックにしたおじさんに何年かぶりに会った。
僕は、正直驚いた。
このおじさんは、親父に付いて仕事をしていたがいつも汚れた作業着を着て頭は、坊主か角刈りでとても怖い印象といかにも作業員という雰囲気だった為に前にいるスーツ姿のおじさんが何だか別人に見えた。
おじさんと焼肉を食べに行き話した。
おじさんは、時々金貼りのライターで煙草に火を着けながら僕に色々な事を聞いたり親父の会社の状況の話しをした。
おじさんは、何度もこのまま作業員を続けるのもいいだろうが会社に入らないかと僕に言って来た。
僕は、戸惑った。
おじさんは、具体的な給料の提示もして来たが今の僕には、低すぎた。
だが、若くて経験のある人間が欲しいとおじさんは、言ってきたしお前は、何だかんだ言っても息子だぞとも言った。
俺は、兄貴が居るじゃないかと言いそうになったが辞めた。
二つ年上の兄は、東京でバンドをやっていて一時期バンドブームと言う馬鹿馬鹿しいブームの頃にはアマチュアとしては、けっこうな人気を得たらしかったが結局プロになれずに未だにバンドをやっていた。
しかし、生活が出来ないらしくどこで聞くのか何度も俺の居る現場に電話がかかって来てお金を貸してくれと言って来た。
いつも兄は、電話の時には酔ってるようだった。
俺は、返って来ないと分かっているお金を何度も貸した。
俺は、仕方ないと思ったし正社員と言う物がどんな物か興味も有り今の現場が終われば会社に入る事を承諾した。