金属バットを買って待つ(仮題)
朝の光りで目が覚めた。
いつの間にか寝たようだったが時計を見るとまだ六時前だった。
約四時間しか寝れてなかったが、身体は、少しだけ楽になってるようだった。
俺は、車を降りて公園に行き公衆トイレで用を足すと、トイレの鏡で顔を見た。
短髪で、頬が削げ疲れた自分自身の顔が鏡に映っていた。
トイレの水道で顔を洗い口をゆすいだ。
歯磨きセットを車から取って来るのを忘れてしまったが、まぁ、いいかと思った。
自動販売機に行き缶コーヒーを買って車に戻った。
車の後部座席を探って袋を取り、その中から安定剤を三錠取り出してコーヒーと一緒に飲む。
俺は、二年ほど前から自律神経失調症になり時々こうして安定剤を服用するようになっていたが、ほとんど気休めのような物だった。
携帯の電源を入れると一分もしないうちに携帯が鳴る、見ると珍しく知っている番号だった。
「陽一か。大丈夫か?
手短かに言うぞ。
会社が駄目になって機械のリース代が回収出来ない石井の所がヤクザを使ってお前を狙ってるらしい。
俺は、そんな事をしても無駄じゃないかと言ったが、分からんから気をつけろよ。
カッとなるなよ。
落ちつけよ。
それと、落ち着いたら沖縄に戻れば俺がお前は、働かせてやるから心配するな。
とにかく、逃げろ。
今は、辛抱しろよ。」
沖縄でつい最近まで一緒に働いていた柳川所長だった。
うちの会社は、主にトンネル工事を行う土木会社だった。
沖縄の現場は、まだ一年以上は、続く現場だった。
柳川所長は、そこの元請けの所長で俺は、かつて下請けの所長としてそこにいたが会社がゴタゴタし始めて沖縄を離れた。
柳川所長には、ある程度の話しをしていたし倒産前に下請けを他の会社に変えた為にあまり迷惑をかけずにすんだが作業員は、俺が呼んだ作業員が残っていたし色々な面で柳川所長にも本当は、苦労をかけているはずだった。
柳川所長は、四十代半ばのやり手の所長だったが、激しい性格だった為によく俺とは、意見の相違から喧嘩になった。