金属バットを買って待つ(仮題)
俺は、目眩がした。
電話の相手は、俺にマリファナをくれたりしてる昔からの友人の内田という男でヤクザではなかったが裏の世界で生きる人間だった。
妹の存在を忘れていた。
これには、さすがに参った。
妹は、俺の、九歳下で確か今24歳だ。
多分上手く逃げてないはずだ。
ヤクザは、こういう場合何でもするのを知っている。
親父や役員連中は、最初から逃げ場を決めて上手く逃げてるようだし親父には、しっかり者の母も付いてる。
妹は、一人でアパートにいるだろう。
とにかく、妹の連絡する為に携帯を掛けた。
「陽一兄ちゃんどうした?」
のんびりした声で梨香が出た。
俺は、苛立ちながら説明した。
「梨香、あのなあ、とにかく逃げろ。
アパートを出て安い旅館にでも入っていろ。
ヤクザが動いてて狙われるかも知れない。
お金なら少しは、送金出来るからとにかく、逃げろ。」
「何?怖い事言わないでよ。
でも、分かった。
陽一兄ちゃんがそう言う事言うの珍しいから逃げるよ。お金は、何とかなるから心配しないで。」
「誰にも言わずに早く隠れろよ。」
「分かった。分かった。
陽一兄ちゃんこそ大丈夫?」
「俺は、ぜんぜん問題ないよ。」
俺は、少しだけほっとして携帯を切った。
財布から石井の名刺を引っ張り出して見る。