レンタル彼氏Ⅲ【完結】
手が震える。


泉を失うかもしれないことが、こんなにも怖いことだなんて。


わかっていたことなのに。

今、改めて突き付けられたような気がした。



「そっち止血して」

「脈は?!」


救急車の中で、慌ただしく救急隊員が話すのをどこか上の空で聞いていた。


ただ、泉の手を強く握りしめるだけ。




俺と出会わなければ。


泉は俺と出会わなければ。



こんなことにもならなかったのに。



代われるものなら代わりたい。

俺がその痛み、引き受けたい。


あの男と、俺。

どうして、俺たちはきちんと狙った相手を刺せないのだろうか。



泉は呼吸器をつけてもらって、弱弱しく息をする。

その様子を見て、悔しくて涙が滲む。
だけど、今辛いのは泉なのだと必死にその涙が零れないように我慢をした。


幸せにすると誓ったのに。

あの日、再会できた日。


もう、二度と放さないと誓ったのに。

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