レンタル彼氏Ⅲ【完結】
今日、ここに来るのは二回目だ。


毎年、命日になるとここに訪れることを決めた。



それが泉の為にもいいだろうと思う。


精神的にもきっと、楽になれるだろう。




「…伊織っ」


「もういいのか?」


「うん、平気」




そうやって、泉はお寺を見上げた。





あの時、手術は成功も失敗もした。



今も思い出すと苦しくなる。




「……残念ながら………」



そう言った医師に、俺は酷く取り乱したと思う。



「嘘だ!」


何度もそう言った。




それに医師は慌てながら、俺の言葉を遮った。



「浜田さんは、彼女は無事です!」






「え?」



そこにいる誰もが同じ言葉を発したと思う。



それから医師は、一度息をついてからこう言った。
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