レンタル彼氏Ⅲ【完結】
「………亡くなってしまったのは、お子さんです」
「……え?」
「浜田さん、妊娠していたんですよ」
「………………」
それに皆が息を飲んだ。
一人を除いて。
「…伊織さん、聞いてなかったんですか?」
そう言ったのは、尚子だった。
「……し、知らない」
本当に知らなかった。
いつ…いつ妊娠したってわかったの?
「…おかしいな、産婦人科に一緒に行くって張り切ってたのに」
それで俺は、やっと気付いた。
今日、泉が何であんなにご機嫌だったのか。
何で急に行きたいとこがあると言ったのか。
何で転ぶよ?と言った俺の言葉に素直に従ったのか。
全部。
全部、妊娠していたからだ。
子供の名前の話も。
いきなり顔が曇ったのも。
全部、全部。
…………全部。
妊娠したから……?
……俺と、泉の赤ちゃん…?