レンタル彼氏Ⅲ【完結】
病室を出た後、悔しくて、苦しくて。


涙が溢れ出た。



俺は泉と一緒にいたらいけないんだ。


離れた方がいいのかもしれない。



それが、泉の幸せなら。







「…伊織!」


ふらふらと歩く俺に声がかかる。


相手は聖だった。



「……絶対別れんなよ」


「………………」



顔を覆いながら、俺は首を横に振る。


「わかってねえな、泉には…伊織しかいねーんだよ」


それでも。


更に首を強く振る。




聖ははあっと溜め息をつきながら、俺の側まで来る。


「…………目覚めた時…」


歪む視界で、聖を見る。


「…子供も、伊織もいなかったら泉はどう思う?」


「!!」


「今まで何があっても泉が笑ってたのは…伊織がいたからなんだよ」


「……………」


「泉を一人にすんなよ」



…………。


泉を俺は。


一人にさせようと……?





幸せに出来ない。

そんなこと、自分のエゴなだけであって。



幸せに出来ないじゃなくて…幸せにするんだ。



俺が泉を。
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