レンタル彼氏Ⅲ【完結】
「……いお、りは?」



泉の開口一番の言葉。



「泉っ、その人の所為でこんな目に遭ったのよ?!」


母親がそう言うのを、泉は笑って首を振る。



「…伊織に、会えなきゃ…私の人生、死んだも同じだよ…」



そんなことを言う泉が。

愛しい。

愛しいよ。




人の隙間から、俺を見つけた泉はゆっくりと手を伸ばす。



「…伊織」



こんなことが起こったのは俺の所為なのに。


泉は何も責める気なんかないみたいだ。



「……泉」


「…赤ちゃん、ダメだったんでしょ…?」


「………泉っ……」


「……心配、かけてごめんね…」


「……………うぅっ……」






どうして。

どこまでも。



泉は眩しい。





涙でもう、顔はぐちゃぐちゃだ。


「…おばさん、おじさん、伊織と泉二人にしてあげて下さい。
…お願いします」



そうやって、頭を下げたのは和だ。

それから尚子も、学も、…聖も同じように頭を下げた。



「お願いします!!」



流石に四人に言われては、諦めるしかなかったのか、母親は病室を出て行った。
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