レンタル彼氏Ⅲ【完結】
その後を追う父親は、病室を出る前一度立ち止まるとくるっと伊織の方を見た。


「…伊織君」


それに俺も涙でぐちゃぐちゃの顔で、父親を見た。



「……娘は、泉は…最近明るかったんだ。
いいことでもあったんだろうと母さんとも言ってたが……君だったんだね」


「…………ふっ、う、く」


「母さんも泉のことを思っての態度なんだ。許してくれ」


それに俺はぶんぶんと首を振る。

だって、怒ったって仕方がない内容だ。


「…私は…泉が選んだ人ならいいと思っているから」


「…………はい!!」


力強く返事する俺に、ふふっと笑ってから泉の父親は病室を出ていった。



「…お父さん」


泉がぽつりと呟く。




「あー、ほら邪魔者出ていった出ていったー!」


それに和が皆を押し出しながら言った。



最後に、扉を閉める間際。

泉と俺にウインクをして。



「……和ったら…」


楽しそうにそう言う泉を、俺はただ見つめる。



「………泉」


「伊織、おいで」



それに素直に従って、俺は泉の目の前に行く。

それから泉の体を優しく抱き締めた。
< 120 / 140 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop